令和5年度 京大ロー入試 刑事訴訟法

 今回は令和5年度京大ロー入試の刑事訴訟法について書きたいと思います。

 

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①解答構成

②反省

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刑事訴訟法 30点

 

①解答構成

3枚半 50分

 

⑴Xに虚偽の事実を伝えて尿瓶に排尿させたKの行為

 

Kの行為は「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)といえるか

《規範》「強制の処分」の意義

本件では、Xは検査の意図を知っていれば尿瓶に排尿していないと考えられる。また、Xの尿瓶への排尿はトイレが使用不可能であり、後にKが当該尿を廃棄してくれるとのKの言葉を信じたためのものであり、Xはそれらの虚偽の事実がなければ尿瓶への排尿に同意したとは言えず、Xの意に反している。そして、上記Kの言動に基づくXの尿瓶への排尿は、Xの採尿を拒否するという重要な権利を実質的に侵害・制約する。よって、本件Kの行為は「強制の処分」にあたる。

よって、強制採尿令状のない本件Kの行為は違法である。

 

⑵Y宅の玄関インターホンを鳴らして「Yさん、宅配便です。」と噓をついてWにドアを開けさせたLの行為

 

Lの上記行為は「必要な処分」(刑事訴訟法222条1項、111条1項)として適法か

《規範》「必要な処分」の意義

《規範》「必要な処分」の限界

本件についてみると、覚せい剤はトイレに流すなどして証拠隠滅が容易にできるという性質があり、玄関前で警察官が来たことがばれると、証拠品となる覚せい剤を隠滅されるおそれがある。また、刑事訴訟法111条1項は錠を外すことを認めているため、より緩やかな手段である上記欺罔行為も許容されると考える。よって、上記Lの行為は「必要な処分」といえる。

よって、本件Lの行為は適法である。

 

⑶Y宅の中に侵入してから、令状を提示したLの行為

 

令状の事後呈示は認められるか

「令状の呈示」(刑事訴訟法222条1項、110条)はどのタイミングでするべきか

《規範》令状の事前呈示の原則

《規範》令状の事後呈示の可否

本件では、LはY宅に侵入後にYに本件捜索差押許可状を呈示しているので、違法であるようにも思える。しかし、令状を呈示のしている短時間のうちに容易に隠滅できるという覚せい剤の性質を考慮すると、本件捜索差押えの実効性を確保するためには令状の事後呈示もやむを得ない。

よって、上記Lの行為は適法である。

 

 

②反省

 問題文を読んで「ああああ!!!わかるぞぉこれ!!」となり、解答の道筋がすぐに立ちました。そして、快調にペンを走らせていると「んんん???」となりました。Kの採尿を強制処分にしたことは良いものの、通常の強制採尿とは違い、カテーテルを差し込む等の身体的な侵害要素が少なかったため、必要な令状がよくわかりませんでした。問題文に「強制採尿令状」という言葉があったので、とりあえずそれでまとめました。Lの行為については比較的簡潔に解答することができたと思います。