令和5年度 京大ロー入試 憲法

 今回は令和5年度京大ロー入試の憲法について書きたいと思います。

 

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①解答構成

②反省

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憲法 62点

 

①解答構成

第1問 85分 4枚ぎっしり

 

⑴Cに対する集会不許可処分の憲法上の問題

本件不許可処分はCの集会の自由を侵害したとして、憲法21条1項に反するといえるか。

保護領域に含まれるか。

「集会」の定義。あてはめ。

制約があるといえるか。

集会の自由は防御権であり、道路等の公的施設の使用を求める権利までは含まれていないため、制約はないように思える

もっとも、《規範》パブリック・フォーラム論

本件では道路は伝統的パブリック・フォーラムであり、原則として自由な集会が可能であり、Cの集会の自由は制約されているといえる。

では、違憲審査基準をどのように設定するか。

以下の人権の性質を考慮。

1.道路は原則自由な集会が認められるべき場所である(パブリック・フォーラム論)。

2.集会の自由は自己実現にとって重要で、民主的プロセスにとって不可欠であり、また裁判所の審査能力も十分に及ぶ(二重の基準論)。

3.本件の制約は、Cの集会の手段・方法に着目する内容中立規制のように見えるが、「申請された集会の場所は行政代執行の現場に近接しており、合法的に行われる行政代執行を実力で妨害するおそれがある」という不許可理由は、Cの集会の内容が行政代執行の目的物である看板に深く関わっているために懸念されるものである。そうすると、Cの集会の内容が本件のようでなければ、許可されていたと考えることができ、内容規制であるといえる。内容規制によって保護される利益はその内容や程度が曖昧であって、その分恣意的になりやすく、また時・場所・方法のいかんを問わず規制されるため、その分制約が大きい(内容規制・内容中立規制二分論)

よって、厳格な基準を用いる。

具体的には《規範》明白かつ現在の危険の基準

本件についてみると、Cは集会を平和的に行うつもりであったため、本件行政代執行を実力で妨害する明白な蓋然性があったとは言えない。また、交通妨害については警察官を配置するなどして対処可能であった。とすると、本件では明白かつ現在の危険があるとは言えず、道路交通法77条2項の許可要件をみたしていないとは言えない。

以上より、本件不許可処分はCの集会の自由を不当に制約するものとして違憲である。

 

 

⑵Dに対する処罰の憲法上の問題

本件処罰はDの表現の自由を侵害したとして、憲法21条1項に反するといえるか。

保護領域に含まれるか。

「表現」の定義。あてはめ。

制約があるといえるか。

処罰されれば、自由な表現活動ができなくなるので、制約あり。

では形式的な側面から、本件処罰の根拠となった道路交通法77条1項4号に基づくB県公安員会の定める道路交通法施行細則に明確性があるか。

《規範》明確性の原則

本件では、本件施行細則の「人が集まるような方法」という文言が抽象的であり、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に自己の行為がその適用を受けるか否かの判断を可能ならしめる基準が読み取れるとは言えない。

よって、Dの表現の自由が不当に制約されているので、違憲

また実質的な側面から、違憲審査基準をどのように設定するか

以下の人権の性質を考慮。

1.表現の自由自己実現にとって重要で、民主的プロセスにとって不可欠であり、また裁判所の審査能力も十分に及ぶ(二重の基準論)。

3.もっとも、本件の制約はDの演説の手段・方法に着目する内容中立規制であり、内容中立規制によって保護される利益は客観的に把握できるので、その分恣意的になりにくく、また特定の時・場所・方法における規制であるため、その分制約が小さい(内容規制・内容中立規制二分論)

《規範》厳格な合理性の審査

本件では、交通の安全保護という目的は重要。もっとも、処罰という手段については、Dに前科を残すという重大なものであり、いきなり処罰するのではなく注意や勧告などのより緩やかな方法でも目的を達成できたといえる。よって、目的と手段との間に実質的関連性があるとはいえない。

以上より、本件処罰はDの表現の自由を不当に制約するものであり、違憲である。

 

 

第2問 45分 3枚とちょっと

 

本件訴えが憲法76条1項のいう「司法権」の範囲内といえるか

実質的意味の司法権とは、具体的な争訟事件について、法を適用し、宣言することによってこれを解決する国家作用である。

「具体的な争訟事件」とは、「法律上の争訟」(裁判所法3条)と同意義である。

「法律上の争訟」とは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関わる紛争であって、かつ、法律の適用によって終局的に解決しうべきものをいう。具体的には、①紛争の具体性があること②当事者の権利義務・法律関係に関する紛争であること③法的解決可能性があること④紛争解決の終局性があることが必要である。

また、裁判所法3条にいう「その他法律において特に定める権限」とは客観訴訟や非訟事件についての権限である。一方で同条のいう「日本国憲法に特別の定がある場合」とは議員資格の争訟(憲法55条)、裁判官の弾劾裁判(憲法64条、78条)のことを指す。

本件訴えに関連して、2020年判決は地方議会の出席停止についての訴訟が「法律上の争訟」にあたるとした。これは地方議会が直接選挙(憲法93条2項)であるから、議員の出席停止が一般市民の法秩序に関わるものだと評価されたという理解もあるが、選挙形式と一般市民の法秩序の関係は曖昧であるため、妥当ではない。むしろ、地方議会の自律性の憲法上の根拠が不明確であるため、その独立性を尊重する必要がないと評価されたと考えるのが妥当である。

一方、議院については自律権が憲法上保障されており(憲法58条、55条、50条)、議員の懲罰権については憲法上明文の規定がある(憲法58条2項)。そうすると、裁判所は議院の独立性を尊重するべきである。

以上より、裁判所が議員の懲罰について審査することは議院自律権を侵害することになるため違憲である。よって、本件訴えは「法律上の争訟」にあたらない。

 

 

②反省

 第1問は目的手段審査に強引にあてはめました。Cに対する処分が内容規制であることについては憲法演習ノートに同じような考え方が書いてあったので、それを思い出して使いました。書きたいことは全部書いたので、手ごたえはいい方だったと思います。

 第2問は日評ベーシックに書いていたことをそのまま思い出せたことは、個人的にはファインプレーでした。ただ、部分社会の法理にもう少し言及すれば点数は伸びたかなと思います。「法律上の争訟」の要件についても、ただ羅列しただけですので、一つ一つの要件と本件の関係も明示すべきだったと思います。