令和5年度 京大ロー入試 民法

 今回は令和5年度京大ロー入試の民法について書きたいと思います。

 

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①解答構成

②反省

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民法 66点

 

①解答構成

第1問 70分 3枚半

問1

⑴AはCに対し、甲土地の所有権に基づく抵当権設定登記抹消請求をすることが考えられる。

CはAに対し、民法117条の「第三者」にあたるとして対抗できるか

《規範》「第三者

Cは「第三者」にあたり、Aは甲土地の所有権移転登記をしていないので、Cの上記主張は認められる。よって、Aは本件抵当権の負担付きの甲土地の所有権を有する。(Aを「物上保証人」と書いたか、「第三取得者」と書いたか覚えていません)

 

⑵AはCに対し、CがBに対して有する貸金返還請求権が時効により消滅しており、本件抵当権もその付従性により消滅していると主張することが考えられる。

消滅時効の要件(民法166条1項1号)

あてはめ。本件では要件を満たす。

そして、Aは援用権者(民法145条)であるため、本件貸金返還請求権の消滅時効の援用が可能である。

もっとも、Bは時効が完成した2027年10月11日以降の同年11月1日にCに対して100万円を返済している。このような自認行為にはどのような法的効果があるか。

《規範》時効完成後の自認行為

本件ではBは信義則上(民法1条2項)、時効の援用権を喪失する。

その効果はAの時効の援用権にも及ぶか

自認行為による援用権喪失の根拠が信義則であることを考えると、援用権喪失は相対効に留まるとも考えられる。しかし、債権者が時効援用権を有する第三者の存在を知る余地のない場合には、債務者が自認行為によって時効援用権を喪失していると信頼している債権者にとって、当該第三者の援用権の行使を防ぐ手段は事実上存在しないといえる。よって、債権者のあずかり知らない第三者の登場により、債権の行使が時効の援用により妨げられるのは妥当ではないと考える。よって、このような場合には時効援用権の喪失の効果は当該第三者にも及ぶ。

あてはめ。本件では、Aも時効援用権も喪失する。

よって、Aの上記主張は認められない。

 

⑶AはCに対して、本件抵当権が時効により消滅したと主張することも考えられるが、この点は民法396条により認められない(簡単に言及)

 

問2

DはAに対し、甲土地の所有権に基づく明渡請求をすることが考えられる。

AはDに対し、AB間の売買契約による所有権喪失の抗弁

DはAに対し、民法177条「第三者」にあたるとして対抗

《規範》「第三者

本件では、Dは転得者にはあたらず、B⇒AとB⇒Dの二重譲渡の関係にある。よって、Cが背信的悪意者か否かはDが「第三者」にあたるか否かに関係しない。

あてはめ。Dは「第三者」である。

よって、Dの上記主張は認められる。

 

 

第2問 50分 3枚ちょっと

問1

AはCに対し、甲土地の所有権に基づく所有権移転登記抹消請求をすることが考えられる。

CはAに対し、Bの代理行為によるAC間の売買契約を理由に所有権喪失の抗弁を主張する

AはCに対し、Bの行為は無権代理民法113条1項)にあたり、Aが追認しない限り、Aに効果は帰属しないと主張する

CはAに対し、Bの行為は代理権消滅後の表見代理民法112条1項)であるため、その効果はAに帰属すると主張する

民法112条1項の要件

①代理行為②顕名③基本代理権の授与④基本代理権の消滅

あてはめ。本件では要件を満たす。

もっとも、AはCに過失があるため、民法112条1項但書が適用されると主張する

本件では、CはBに代理権が授与されている旨を伝えられ、委任状等を呈示されている。そしてCは自宅を建てるための敷地を探していたのであり、業者ではないため、それ以上の確認義務がないかのように思われる。もっとも、AがBの代理権を消滅させてからBC間の売買契約が締結されるまでの間隔はたったの1週間であり、その間にAがBから委任状等を回収していなくても仕方がないともいえる。そのようなAの帰責性の低さを鑑みると、CがBの委任状等を信頼するのは妥当ではなく、CはAに直接確認すべき義務があったといえる。よって、Cには「過失」があるといえる。

よって、民法112条1項但書の適用により、上記Cの主張は認められない。

 

問2

Aの追認(民法113条1項)により、BC間の売買契約の効果はAに帰属する。

よって、AとCは互いに契約履行義務を負う。

では、本件のような場合に、契約不適合を理由にCはAにどのような請求をすることができるか。

①不足部分の追完請求(民法562条1項)

本件では、追完は不可能。

②解除(民法562条・542条1項3号)

本件では、10平方メートルの不足部分があるとしてもCの自宅の建築は予定通り進めることができるのであり、「残存する部分のみでは契約をした目的を達することができない」とは言えない。よって、解除は認められない。

③代金減額請求(民法563条2項1号)

もっとも本件では、Cはすでに代金を支払っており、代金の減額分の返還を求める法的構成が問題となる。

《規範》代金を減額できた場合における支払済代金の一部返還請求

121条の2第1項類推適用

あてはめ。本件では認められる。

債務不履行による損害賠償請求権(民法564条・415条1項・416条1項)

《規範》損害賠償額の算定時

本件では、Aが追認したのは2022年4月10日であり、開発計画の公表は2022年7月である。とすると、Aが開発計画の公表を理由とする甲土地の値上がりを予期していたとは言えない。

よって、通常損害が発生していれば、その範囲でCの損害賠償請求は認められる。

 

 

②反省

 民法は現場思考が多かったため、一番自信なかったです。解答の筋道は10分ぐらいかけて考えました。無理に知っている論点に当てはめようとせず、聞かれていることに素直に答えようと努力したのが、よかったのかなと思います。あと、佐久間先生の「民法の基礎」に載っているコラムを読んでいたので、その知識を応用することで妥当な結論に至ることができました。コラムの知識は結構役に立つのでおススメです。