【寄稿】令和5年度 京大ロー入試 5年一貫型教育選抜(法曹基礎プログラム)面接2

 先日、友人から「これせっかく書いたけど放置してて、せっかくだからブログに載せてほしい」という依頼を受けたので、その寄稿文を代打で掲載させていただきます。京大ロ―入試の5年一貫型教育選抜の面接に関する情報はまだ少ないので、受験される方はぜひ参考にしてください。

 ちなみに僕自身の面接の記録も紹介しておくので、見比べてみてください。質問内容が違いすぎて、本当にその時に思ったことを聞いているのではないか?と思えてきます。今回の寄稿文では、僕の面接記録よりも詳しく書かれているので、僕も読んでて非常に面白かったです。

 

**********

以下、寄稿文(原文ママ

**********

(1) 点数 43点

(2) 基本情報

・試験官は2名(僕の教室はS先生&W先生)

・試験時間は10分~15分でした。教室ごとにかなり違うようです。

・服装:一応スーツを着ていきました。ほかの人もスーツでした。

・以下の問答の30%くらい回答の明瞭度を下げたものが本番相当になると思います。本番は「え~」とか言い直しとかもけっこうあり、また、論理一貫していないこともちょいちょい言っていたような気がします。

(3) 質問内容・回答

①受験番号と氏名
②志望動機

「……」(自己評価書の要約)

あまり興味なさそうでした。執筆者が試験室1人目でしたが、このような態度を取っておられたので、全員に対してこんな感じなのだろうと思います。

法科大学院でどのようなことを学びたいか

志望動機で「先端的な内容を学びたい」と言ったことの深堀りでした。「実務家教員が担当する専門に直結する分野の科目を学びたい」云々を答えました。

④学業で力を入れた点

自己評価書どおりのことを答えました。だいたい知っている感じの反応をされたので、自己評価書はある程度目を通しているのだろうと思います。

「(1) 司法試験では選択科目は1科目でよいが、複数の選択科目を履修する(〇法と△法と□法)など、幅広い学修に力を入れた、

(2) Xゼミで幅広く取り組んだ」というようなことを答えました。

⑤X先生は厳しい?

W先生がXゼミ出身だからか、この話になった。「レジュメの作り方などを厳しくご指導いただけるが、分からなければ聞いたら答えてくれる」みたいなことを答えた。

⑥司法試験の選択科目は何にするの?

「△法にしようと思ってます。」

⑦授業科目の方で力を入れたのは?

「Y先生の債権各論です。」

⑧どのような点が難しかったの?

「典型契約は普通の民法のノリで勉強できるが、不法行為など法定債権は観念的な話が多く、難しかった。分からないところは友人に聞くことでなんとかした。」

⑨じゃあさ、債権各論と債権総論の関係性ってどんなものだと思う?

いちばんの謎質問でした。S先生の部屋だった他の受験生も、「親族法と財産法の関係は?」など、なかなか困る質問をされていたようです。そのため、試験官によっては、気まぐれにこのような質問をしてくる可能性があると心の準備をしておくとよいと思います。

かなり詰まっていたところ、W先生が「債権各論だと、さっき言っておわれた典型契約と法定債権って2つの分野があるけど、債権総論とつながりが深いのは典型契約の方だよね」というような助け舟を出してくれたので、「詐害行為取消しの制度は債権総論に規定されているけど、不法行為で詐害行為取消しが出てこないように、債権総論は不法行為の総論とは言い切れないので、債権総論と債権各論という分類の仕方はおかしい面もあるのではないか…」というような内容をしどろもどろになりながら答えました。

⑩苦手科目はあった?どうやって克服した?

さっきの質問がこんな感じでガチだったのに、急に甘くなってびっくりしました。

行政法です。行政法で、よく分かっている友人にある程度聞いた後、N先生に質問したらちょっとわかりました。」

⑪そうなんだ、友達とけっこう勉強してるんだね。

「試験前にみなで集まって過去問を解いたり、教材を皆で集まってやったりしています。」

⑫そういうので仲間集めるの難しくない?

「う~んやっぱり積極的に声をかけるのが大事なんじゃないかと思います。積極的に声かけてるうちに、誘われることも増える気がしますし」

ここらへんで内心「だからなんやねん」と思い始めました。

⑬(S先生)ロースクールでも自主ゼミが学部時代以上に積極的に作られてるんだよね~。W先生もそうだった?

(W先生)いや、ぼくロースクール行ってないです。

(S先生)そっか、そういう自主ゼミについてどう思う?

このタイミングで質問されると思わなかったのでびっくりしました。

「いや~はい、この院試を受けている人と自主ゼミ組んでいるので、ロースクール行ってからもそういう感じでやりたいと思います」

⑭なんかIT系の資格持ってるんだよね(注:某資格を持っています)。そういうの法曹の仕事にどう生かしたい?

この質問は準備していました。

「ITに関する事案では、法律家に十分な知識がないと、困っている人を適切に助けられない事案がある、Winny事件とか、コインハイブ事件とか…。ITについての原理的な理解を持つことで、そういった事件にも積極的にかかわっていきたい。」

⑮ということはマチベン的なん志望してる?

「いや、企業法務でも困ってる人を助けることには携われると思います」

⑯お、そうなの。それはインターンで学んだ?

「はい。A事務所とB事務所に行かせてもらって、どちらも企業法務中心の事務所なのですが、私が先ほどのような将来希望を伝えたら、企業法務でも同じようなことはできるよ、と言われました」

法律事務所名はメモされていました。

⑰そうだったんだ~。Wさんなんかある?(W:ないです)

じゃあ4月にまたお会いしましょう。これで面接は終わります。

え、合格確定?(なんか今になるとホントにこう言っていたのか自信なくなってきています。何かしらの暖かい言葉をいただいたということです。)

「ありがとうございました。失礼いたします。」

令和5年度 京大ロー入試 民法

 今回は令和5年度京大ロー入試の民法について書きたいと思います。

 

**********

①解答構成

②反省

**********

 

民法 66点

 

①解答構成

第1問 70分 3枚半

問1

⑴AはCに対し、甲土地の所有権に基づく抵当権設定登記抹消請求をすることが考えられる。

CはAに対し、民法117条の「第三者」にあたるとして対抗できるか

《規範》「第三者

Cは「第三者」にあたり、Aは甲土地の所有権移転登記をしていないので、Cの上記主張は認められる。よって、Aは本件抵当権の負担付きの甲土地の所有権を有する。(Aを「物上保証人」と書いたか、「第三取得者」と書いたか覚えていません)

 

⑵AはCに対し、CがBに対して有する貸金返還請求権が時効により消滅しており、本件抵当権もその付従性により消滅していると主張することが考えられる。

消滅時効の要件(民法166条1項1号)

あてはめ。本件では要件を満たす。

そして、Aは援用権者(民法145条)であるため、本件貸金返還請求権の消滅時効の援用が可能である。

もっとも、Bは時効が完成した2027年10月11日以降の同年11月1日にCに対して100万円を返済している。このような自認行為にはどのような法的効果があるか。

《規範》時効完成後の自認行為

本件ではBは信義則上(民法1条2項)、時効の援用権を喪失する。

その効果はAの時効の援用権にも及ぶか

自認行為による援用権喪失の根拠が信義則であることを考えると、援用権喪失は相対効に留まるとも考えられる。しかし、債権者が時効援用権を有する第三者の存在を知る余地のない場合には、債務者が自認行為によって時効援用権を喪失していると信頼している債権者にとって、当該第三者の援用権の行使を防ぐ手段は事実上存在しないといえる。よって、債権者のあずかり知らない第三者の登場により、債権の行使が時効の援用により妨げられるのは妥当ではないと考える。よって、このような場合には時効援用権の喪失の効果は当該第三者にも及ぶ。

あてはめ。本件では、Aも時効援用権も喪失する。

よって、Aの上記主張は認められない。

 

⑶AはCに対して、本件抵当権が時効により消滅したと主張することも考えられるが、この点は民法396条により認められない(簡単に言及)

 

問2

DはAに対し、甲土地の所有権に基づく明渡請求をすることが考えられる。

AはDに対し、AB間の売買契約による所有権喪失の抗弁

DはAに対し、民法177条「第三者」にあたるとして対抗

《規範》「第三者

本件では、Dは転得者にはあたらず、B⇒AとB⇒Dの二重譲渡の関係にある。よって、Cが背信的悪意者か否かはDが「第三者」にあたるか否かに関係しない。

あてはめ。Dは「第三者」である。

よって、Dの上記主張は認められる。

 

 

第2問 50分 3枚ちょっと

問1

AはCに対し、甲土地の所有権に基づく所有権移転登記抹消請求をすることが考えられる。

CはAに対し、Bの代理行為によるAC間の売買契約を理由に所有権喪失の抗弁を主張する

AはCに対し、Bの行為は無権代理民法113条1項)にあたり、Aが追認しない限り、Aに効果は帰属しないと主張する

CはAに対し、Bの行為は代理権消滅後の表見代理民法112条1項)であるため、その効果はAに帰属すると主張する

民法112条1項の要件

①代理行為②顕名③基本代理権の授与④基本代理権の消滅

あてはめ。本件では要件を満たす。

もっとも、AはCに過失があるため、民法112条1項但書が適用されると主張する

本件では、CはBに代理権が授与されている旨を伝えられ、委任状等を呈示されている。そしてCは自宅を建てるための敷地を探していたのであり、業者ではないため、それ以上の確認義務がないかのように思われる。もっとも、AがBの代理権を消滅させてからBC間の売買契約が締結されるまでの間隔はたったの1週間であり、その間にAがBから委任状等を回収していなくても仕方がないともいえる。そのようなAの帰責性の低さを鑑みると、CがBの委任状等を信頼するのは妥当ではなく、CはAに直接確認すべき義務があったといえる。よって、Cには「過失」があるといえる。

よって、民法112条1項但書の適用により、上記Cの主張は認められない。

 

問2

Aの追認(民法113条1項)により、BC間の売買契約の効果はAに帰属する。

よって、AとCは互いに契約履行義務を負う。

では、本件のような場合に、契約不適合を理由にCはAにどのような請求をすることができるか。

①不足部分の追完請求(民法562条1項)

本件では、追完は不可能。

②解除(民法562条・542条1項3号)

本件では、10平方メートルの不足部分があるとしてもCの自宅の建築は予定通り進めることができるのであり、「残存する部分のみでは契約をした目的を達することができない」とは言えない。よって、解除は認められない。

③代金減額請求(民法563条2項1号)

もっとも本件では、Cはすでに代金を支払っており、代金の減額分の返還を求める法的構成が問題となる。

《規範》代金を減額できた場合における支払済代金の一部返還請求

121条の2第1項類推適用

あてはめ。本件では認められる。

債務不履行による損害賠償請求権(民法564条・415条1項・416条1項)

《規範》損害賠償額の算定時

本件では、Aが追認したのは2022年4月10日であり、開発計画の公表は2022年7月である。とすると、Aが開発計画の公表を理由とする甲土地の値上がりを予期していたとは言えない。

よって、通常損害が発生していれば、その範囲でCの損害賠償請求は認められる。

 

 

②反省

 民法は現場思考が多かったため、一番自信なかったです。解答の筋道は10分ぐらいかけて考えました。無理に知っている論点に当てはめようとせず、聞かれていることに素直に答えようと努力したのが、よかったのかなと思います。あと、佐久間先生の「民法の基礎」に載っているコラムを読んでいたので、その知識を応用することで妥当な結論に至ることができました。コラムの知識は結構役に立つのでおススメです。

令和5年度 京大ロー入試 刑法

 今回は令和5年度京大ロー入試の刑法について書きたいと思います。

 

**********

①解答構成

②反省

**********

 

刑法 67点

 

①解答構成

 

第1問 75分 4枚びっしり

 

甲の罪責

⑴Xに「顧客から預かった大金を紛失して大変なことになっている」と嘘をついて、500万円を用意させた行為について

詐欺未遂罪(刑法246条1項・250条)は成立するか

詐欺罪の成立要件

①欺罔行為②欺罔による相手方の錯誤③錯誤による交付行為④財産的損害

《規範》欺罔行為の意義

本件では、甲のXに対する欺罔行為は認定できるため、実行の着手は認められる。もっとも、財産の移転は発生していないので既遂には至っていない。

故意と不法領得の意思は認められる

よって、詐欺未遂罪が成立する。

もっとも甲とXには親族関係があるため、刑法251条・244条1項が適用され、甲の詐欺未遂罪は免除される。

共犯関係については後に述べる。

 

乙の罪責

⑴甲と電話し、X宅に現金を取りに行くように計画した行為

 

詐欺未遂罪(刑法246条1項・250条)の共同正犯(刑法60条)は成立するか

共謀共同正犯の成立要件

①共謀②共謀に基づく実行行為③重大な寄与

本件では、甲と乙の共謀は認定できる。また、乙はX宅に現金を受け取りに行くという重要や役割を担い、報酬として100万円を受け取ることを甲と約束しているため、重大な寄与をしているといえる。

もっとも、本件では乙が甲と共謀した時点で既に甲には詐欺罪の実行の着手が認められる。このような場合にも、要件②について共犯の因果性はあるといえるか

《規範》承継的共犯

本件では、甲の先行行為が乙の関与後も効果を持ち続けており、乙が甲と違法な結果を実現しようとしているため、因果性が認められる。

よって、乙に詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。

 

⑵裕福そうなXを脅して、何百万円か上乗せして巻き上げようとした行為

強盗予備罪(刑法237条)の共同正犯(刑法60条)は成立するか

《規範》「暴行又は脅迫」(刑法236条1項)の意義

《規範》「強取」(同条)の意義

本件では、乙は脅迫のために匕首を用意しており、匕首でXを脅す行為は「暴行又は脅迫」にあたる。また、Xを匕首で脅して現金を巻き上げる行為は「強取」にあたる。よって、乙には「強盗の罪を犯す目的」で匕首を用意している。もっとも、乙はXに「暴行又は脅迫」を加えていないので、実行の着手は認められない。

故意と不法領得の意思も認められる。

よって、Xには強盗予備罪が成立する

甲との関係で共同正犯は成立するか

《規範》共謀後の関与者による予定の変更(抽象的事実の錯誤の類型)

本件についてみると、詐欺罪と強盗罪では相手方の生命身体に危険を加える点で、行為様態が大きく異なり、また乙の動機も甲との共謀時とは異なっている。よって、甲乙間の共謀と乙の強盗予備行為に因果性はない。

よって、甲との共同正犯は成立しない。

丙との共犯関係についてはのちに述べる。

 

⑶玄関ドアをこじ開けた行為

器物損壊罪(刑法261条)が成立するか

《規範》「損壊」の意義

本件では、乙は玄関ドアをこじ開ける際に、何らかの施錠器具を「損壊」したといえる。

また、故意が認められる。

よって、器物損壊罪が成立する。

 

⑷Xの留守中に勝手に入って現金を持ち去ろうとした行為

窃盗未遂罪(刑法235条・243条)が成立するか

《規範》「財物」の意義

《規範》「窃取」の意義

《規範》「実行の着手」(刑法43条)の意義

本件では、X宅内にある現金500万円は「Xの占有するXの財物」である。そして、X宅は留守宅であることを考えると、少なくとも乙がX宅内に侵入し現金500万円を探すために玄関ドアをこじ開けた時点で「実行行為に密着する行為」がなされ、「結果発生の現実的危険性」があると言えるので、実行の着手が認められる。しかし、財物の移転はないので既遂には至っていない。

故意と不法領得の意思はある

よって、窃盗未遂罪が成立する。

 

丙の罪責

⑴乙と共謀してXを脅し、現金を巻き上げようとした行為

強盗予備罪(刑法237条)の共同正犯(刑法60条)は成立するか

共同正犯の成立要件(同上)

乙丙間にはXに対する強盗についての共謀があり、その共謀に基づいて乙が匕首を用意している。また、丙は謝礼をもらう約束をしており、暴力団員で体格がよく強面であることを利用してXを脅迫するために重大な寄与があるといえる。

よって強盗予備罪の共同正犯が成立する

 

⑵乙が玄関ドアをこじ開け、X宅に侵入した行為について

器物損壊罪(刑法261条)及び窃盗未遂罪(刑法235条・243条)の共同正犯が成立するか

共同正犯の成立要件(同上)

本件では、強盗と窃盗の行為様態が大きく異なることを考慮すると、甲乙間ではXを脅迫して強盗をすることについての共謀はあるものの、留守のX宅に侵入して窃盗をすることについての共謀はないといえる。

よって器物損壊罪及び窃盗未遂罪の共同正犯は成立しない。

 

以上より、甲には刑法上何ら罪が成立せず、乙には詐欺未遂罪の共同正犯、強盗予備罪の共同正犯、器物損壊罪、窃盗未遂罪が成立してそれぞれの関係は併合罪(刑法54条)、丙には強盗予備罪の共同正犯が成立する。

 

 

第2問 45分 3枚ちょっと

 

甲の罪責

⑴乙の財布から運転免許証を抜き取った行為

窃盗罪(刑法235条)が成立するか

《規範》「他人の財物」の意義

《規範》「窃取」の意義

免許証は「乙の占有する乙の財物」といえる。また、甲は乙の免許証を乙の意に反して自己の占有に移しているといえるため、「窃取」したといえる。

故意はあり

《規範》不法領得の意思

甲は乙の免許証を一時的に使用するために窃取したのであり、実際に後に乙に返却しているため、権利者である乙を排除する意思はなかったといえる。

よって不法領得の意思が認められないので、窃盗罪は成立しない。

 

⑵Xに対して乙の運転免許証を呈示し、酒を購入した行為

詐欺罪(刑法246条1項)が成立するか

詐欺罪の成立要件

①欺罔行為②欺罔による相手方の錯誤③錯誤による交付行為④財産的損害

《規範》「欺罔行為」の意義

では、本件で甲は乙の免許証をXに呈示した行為は「欺罔行為」にあたるか

Xが甲を乙だと誤信して酒を販売しているが、甲はXに代金を支払っているため、Xの損害は「未成年に酒を販売しない」という社会的利益に過ぎない。とすると、詐欺罪は財産犯であるため、「欺罔行為」も何らかの財産の交付に向けられている必要があるところ、甲の本件免許証呈示行為はそのような財産に向けられたものではないといえる

よって、甲の本件免許証呈示行為は「欺罔行為」にあたらないため、実行の着手は認められない。

よって、詐欺罪及び詐欺未遂罪(刑法246条1項・250条)は成立しない。

 

乙の罪責

⑴甲をベランダに放り出して、風邪をひかせた行為

傷害罪(刑法204条)は成立するか

《規範》「傷害」の意義

本件では、乙が甲をベランダに放り出すという不法な有形力の行使である「暴行」を加え、その結果甲が風邪をひいているため「健康状態を不良に変更させた」といえる。

《規範》傷害罪の故意

本件では、少なくとも乙は甲に対してベランダに放り出すという「暴行」の故意は認められる。

よって、傷害罪が成立する。

 

⑵焚火をしようとライターに火をつけた行為

建造物等以外放火罪(刑法110条1項)が成立するか

《規範》「焼損」の意義

《規範》「公共の危険」の意義

本件では、乙が点火した媒介物の段ボールを離れ、木材に燃え移って「火が独立に燃焼している」の木材を「焼損」させたといえる。また、火災となって近隣の住民が避難するに至ったことから「公共の危険」が発生しているといえる。

《規範》「公共の危険」(刑法110条1項)に対する故意の要否

本件では、乙は「公共の危険」を発生させるという認識・認容はなかったといえるため、故意が否定される。

では失火罪(刑法116条2項)は成立するか

《規範》「失火」の意義

《規範》「過失」の意義

本件についてみると、乙は近くに木材があることを知りながら段ボールに点火していることから、火が木材に燃え移ることについて「予見可能性」があり、木材に燃え移らないように距離をとる等の「結果回避可能性」もあったにもかかわらず、結果回避行為をせずに出火させ、「公共の危険」を発生させている。

よって、失火罪が成立する。

 

以上より、甲には刑法上何ら罪が成立せず、乙には傷害罪と失火罪が成立し、両者は併合罪(刑法54条)である。

 

 

②反省

 (※本番の解答構成はぐちゃぐちゃすぎて何をどの順番で書いたか覚えておないので、上記解答構成の再現度は70%ほどです。)

 

 第一問はえぐかったです。3人の共犯関係が複雑すぎて、よくわからなかったです。満足のいく解答をするのは無理だと思ったので、自分の思考の過程をそのまま解答にしました。採点者の読解力を信じ、下書きはほぼせず、あれこれ考えながら解答を書いたので、目も当てられないほどぐっっっっっちゃぐちゃでした。構成も論証も事実のあてはめも、何一つうまくできたと思えるものがありませんでした。甲乙間の強盗予備罪の共同正犯については、共犯の因果性を認めると錯誤論に行かなければならず、そんな時間も余裕もないと思い、やや無理矢理に因果性を否定しました。乙の窃盗未遂罪についても、実行の着手を早い段階で認めないとスムーズに罪を成立させられなかったので、その論証は強引だったと思います。

 第二問は時間との勝負でした。第一問で大幅に時間を使っていたので、結構急ぐ必要があり、こちらも考えながら答案を書きました。第一問ほどではないと思いますが、解答は結構ぐちゃぐちゃでした。一応思いつくことは全部書いたのですが、学説の対立などに言及している余裕はなかったので、自説をごり押した感じがします。最後の失火罪については、時間がなかったので適当オブ適当で書きました。

 刑法はもともと得意ではあったのですが、本番での手ごたえはあまりよくなかったですし、実際に解答はぐちゃぐちゃを極めていました。なので67点という点数に何が影響したのかよくわかりませんが、少なくとも京大ロー入試においては解答構成や論証の正確性よりも、できるだけ多くの論点に触れることと理論的な思考の展開が重視されているのではないでしょうか。

令和5年度 京大ロー入試 刑事訴訟法

 今回は令和5年度京大ロー入試の刑事訴訟法について書きたいと思います。

 

**********

①解答構成

②反省

**********

 

刑事訴訟法 30点

 

①解答構成

3枚半 50分

 

⑴Xに虚偽の事実を伝えて尿瓶に排尿させたKの行為

 

Kの行為は「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)といえるか

《規範》「強制の処分」の意義

本件では、Xは検査の意図を知っていれば尿瓶に排尿していないと考えられる。また、Xの尿瓶への排尿はトイレが使用不可能であり、後にKが当該尿を廃棄してくれるとのKの言葉を信じたためのものであり、Xはそれらの虚偽の事実がなければ尿瓶への排尿に同意したとは言えず、Xの意に反している。そして、上記Kの言動に基づくXの尿瓶への排尿は、Xの採尿を拒否するという重要な権利を実質的に侵害・制約する。よって、本件Kの行為は「強制の処分」にあたる。

よって、強制採尿令状のない本件Kの行為は違法である。

 

⑵Y宅の玄関インターホンを鳴らして「Yさん、宅配便です。」と噓をついてWにドアを開けさせたLの行為

 

Lの上記行為は「必要な処分」(刑事訴訟法222条1項、111条1項)として適法か

《規範》「必要な処分」の意義

《規範》「必要な処分」の限界

本件についてみると、覚せい剤はトイレに流すなどして証拠隠滅が容易にできるという性質があり、玄関前で警察官が来たことがばれると、証拠品となる覚せい剤を隠滅されるおそれがある。また、刑事訴訟法111条1項は錠を外すことを認めているため、より緩やかな手段である上記欺罔行為も許容されると考える。よって、上記Lの行為は「必要な処分」といえる。

よって、本件Lの行為は適法である。

 

⑶Y宅の中に侵入してから、令状を提示したLの行為

 

令状の事後呈示は認められるか

「令状の呈示」(刑事訴訟法222条1項、110条)はどのタイミングでするべきか

《規範》令状の事前呈示の原則

《規範》令状の事後呈示の可否

本件では、LはY宅に侵入後にYに本件捜索差押許可状を呈示しているので、違法であるようにも思える。しかし、令状を呈示のしている短時間のうちに容易に隠滅できるという覚せい剤の性質を考慮すると、本件捜索差押えの実効性を確保するためには令状の事後呈示もやむを得ない。

よって、上記Lの行為は適法である。

 

 

②反省

 問題文を読んで「ああああ!!!わかるぞぉこれ!!」となり、解答の道筋がすぐに立ちました。そして、快調にペンを走らせていると「んんん???」となりました。Kの採尿を強制処分にしたことは良いものの、通常の強制採尿とは違い、カテーテルを差し込む等の身体的な侵害要素が少なかったため、必要な令状がよくわかりませんでした。問題文に「強制採尿令状」という言葉があったので、とりあえずそれでまとめました。Lの行為については比較的簡潔に解答することができたと思います。

令和5年度 京大ロー入試 民事訴訟法

 今回は令和5年度京大ロー入試の民事訴訟法について書きたいと思います。

 

**********

①解答構成

②反省

**********

 

民事訴訟法 33点

 

①解答構成

50分 3枚半

 

弁論主義の定義

弁論主義の趣旨

《規範》本質説

第1テーゼ「主張原則」

⑴適用範囲

 《規範》弁論主義の適用範囲

 本件では、主要事実は①XがYに150万円を貸し渡したこと②Yが弁済期を過ぎても150万円をXに返済していないことである。これらの事実についてXは陳述しているので、裁判所が当該事実を判決の基礎にすることができる。

⑵訴訟資料と証拠資料の峻別

 《規範》訴訟資料と証拠資料の峻別

 本件では、もしXが第1回口頭弁論期日ではなく、当事者尋問(民事訴訟法207条1項)のなかで本件のような主張をしていた場合には、裁判所は当該事実を判決の基礎にできない。

⑶主張共通の原則

 《規範》主張共通の原則

 本件では、もしXではなくYがXの本件主張をしていた場合でも、裁判所は当該事実を判決の基礎にできる。

第2テーゼ「自白原則」

⑴裁判上の自白の定義

 1.口頭弁論期日及び弁論準備期日における弁論としての陳述であること

 2.事実についての陳述であること

   《規範》弁論主義の適用範囲

 3.相手方の主張との一致

 4.自己に不利益な内容の陳述

   《規範》証明責任説

 本件では、上記①②の主要事実については証明責任がXにあるため、口頭弁論期日及び弁論準備期日において、Yがその内容を認める旨の弁論としての陳述をしていれば、裁判上の自白として認められる。

⑵裁判所拘束力

 本件では、Yが裁判上の自白にあたるような上記陳述をすれば、裁判所は当該事実を判決の基礎にしなければならない。

⑶当事者拘束力

 《規範》自白機能保障説

 《規範》撤回が認められる場合

 本件では、Yが裁判上の自白にあたるような上記陳述をすれば、その主張を撤回することはできない。もっとも、撤回が例外的に許容される場合にあたるような事情があれば、Yは当該主張を撤回できる。

⑷証明不要効(民事訴訟法179条)

 主要事実のみでなく、間接事実や補助事実にも適用。

 本件では、Yが自白した事実については、Xが証明する必要はなくなる。

⑸権利自白

 《規範》権利自白

第3テーゼ「証拠原則」

本件では、Xが「金銭消費貸借契約書」を証拠として申し出たことにより、裁判所は当該契約書を証拠調べすることができる。

Yの「原告の請求を棄却する」との判決を求める旨の陳述は、特に訴訟法上の効果を持つではなく、このままYがなんらXの主張について反論しなければ、Yは敗訴してしまうことになる。

 

 

②反省

 問題を見た時には何を書けばいいのかよくわかりませんでした。しかし問題文に「民事訴訟の手続において」という、広範囲が対象であることを示す言葉があったので弁論主義について知っていることを書きまくろうという考えになり、解答の道筋が立ちました。

 「本件訴訟において想定される訴訟行為」を想像するのが難しく、ほぼすべての観点においてそれっぽい訴訟行為を無理矢理に書きました。あと権利自白は本件訴訟にあまりにも関係なさそうでしたが、その内容に関しては結構詳細に書きました(本件訴訟において想定できる権利自白は書いていません)。手ごたえは悪くなかったと思います。

令和5年度 京大ロー入試 商法

 今回は令和5年度京大ロー入試の商法について書きたいと思います。

 

**********

①解答構成

②反省

**********

 

商法61点

 

①解答構成

第1問 60分 3枚半

⑴AのP社に対する会社法上の損害賠償責任について

 

本件Aの行為が会社法356条1項1号及び365条1項に違反しているため、会社法423条1項の責任を問えるか

まずAの行為が会社法356条1項1号及び365条に違反しているといえるか。

《規範》「重要な事実」の意義

《規範》「自己又は第三者のために」の意義

《規範》「株式会社の事業の部類に属する取引」の意義

本件では、バスクチーズケーキは一般人の目線からすれば、洋菓子と同じくデザート類に分類される。また、Q社の事業はキッチンカーを用いたものであるが、京都市内での販売であること、P社の顧客リストをもとにして展開場所を決定していた。これらの事情を考慮すると、Q社のバスクチーズケーキ製造販売事業はP社の洋菓子の製造販売事業と市場において競合しているので、Aが行った助言や原材料の購入取引はP社の「事業に属する取引」といえる。そして、Q社の事業の経済的利益はQ社及びA・Bに帰属するから「自己又は第三者のため」といえる。しかし、AはP社に「重要な事実」を一切報告していない。

よって、Aの行為は会社法356条1項1号及び365条に違反している。

では、会社法423条1項の責任に問えるか。

要件は①任務懈怠②損害③因果関係

本件では、Aは会社法356条1項1号及び365条に違反しているため、会社法355条の法令遵守義務に違反している(要件①充足)。要件②③については、会社法423条2項の適用により損害額が推定される。もっとも、本件ではQ社の損益計算書上の当期純利益は2年連続で0円であるため、損害額も0円であるかのように思える。しかし、AとBは取締役報酬として月100万円を創業当初から受け取っており、その分の利益はあったといえるため、損害額は推定される(要件②③充足)。

以上より、Aは自己に帰責事由がないことを証明しない限り、AはP社に対して会社法423条1項の損害賠償責任を負う。

 

⑵AのQ社に対する会社法上の損害賠償責任について

 

本件Aの行為が会社法356条1項1号に違反しているため、会社法423条1項の責任を問えるか

まずAの行為が会社法356条1項1号に違反しているといえるか。

⑴と同様に考える。Q社は取締役会を設置していないので、Aは株主総会において「重要な事実」を開始しなければならない。

もっとも、Q社はAが全額出資して設立した株式会社なので、AがQ社の一人株主である。この点、競業取引規制の趣旨は事業の機密や顧客情報を用いて取締役が競業事業を行うことにより、会社に損害を発生させることを防止することにある。そうすると、実質的な会社の利益帰属主体たる一人株主が競業取引を行った取締役である場合には、株主総会の承認は不要であると解する。

よって、本件Aの行為は会社法356条1項1号に違反していない。

以上より、Aに他の任務懈怠がない限り、AはQ社に対して会社法423条1項の損害賠償責任を負わない。

 

 

第2問 60分 3枚くらい

XがPに対して本件手形の支払いを求めることができるか。

Aが本件手形を振り出した行為が代理行為として有効であれば、その効果がPにも帰属する。

では、Aが「支配人」として包括的代理権を有していたか。

《規範》「支配人」の意義

AはPから支配人に選任されているが、衣料品以外の品目を新規に扱う場合にはPの了解が必要であるという制限を設けている。したがって、AはPから包括的代理権を与えられているとは言えないので、商法上の「支配人」にはあたらない。

よって、Aの本件手形の振出に係る代理行為は無権代理であり、その効果はPには帰属しない。

もっとも、Aは「表見支配人」にあたるとして、本件手形の振出に係る代理行為の効果はPに帰属しないか。

《規範》「営業所」の実質

《規範》「主任者であることを示す名称」の意義

《規範》「付した」の意義

本件では、要件を満たすため商法24条が適用されるかのように思われる。

しかし、商法24条但書は適用されないか。

《規範》「悪意」の意義

本件では、Xは納入した中古ソフトが甲使店の店頭で販売されていないことには気づいていたにもかかわらず、中古ソフトの行方をAに問い合わせることもなく、約1年も経過している。これらの事情を考慮すると、Xには重過失がある。

よって商法24条は適用されない。

もっとも、本件ではAが商法上の「支配人」である旨の不実の登記がある。そこで、商法9条2項が適用されないか。

《規範》「善意」の意義

本件では、PはAが商法上の「支配人」でないにもかかわらず、故意にAが「支配人」である旨の登記をしている。また、XはAが「支配人」でないことについて善意であるといえる。

以上より、商法9条2項により、本件手形の振出に係る代理行為の効果はPにも帰属する。したがって、XはPに対して本件手形の支払いを求めることができる。

 

 

②反省

 第1問については、最初に問題を見た時に⑴と⑵でどのように解答に差をつければよいのか分からず、ほぼ同様の議論を繰り返していいのか?と迷いました。そこで、問題文を注意深く読み直したところ、Q社に取締役会が設置されてないことやAの全額出資であることが目につき、解答の道筋が立ちました。⑴の役員報酬と損害額の推定の関係については同じような事例がロープラに載っていたので、それを思い出して参考にしました。⑵の一人株主と競業取引についての規範は、一人会社と利益相反行為についての規範を応用して現場思考で書きました。

 第2問。まっっっっっっっっじで焦りました。手形が出てきているのに、手形法の適用の必要性と論点が全く思い浮かばない、かつ、商法の論点についてもすっきり当てはまるものが思い浮かびませんでした。どうしようって思いながら、15分くらい思考錯誤しました。その中で商法総則の基本書のコラムを思い出し、Aは「支配人」なのか?という疑問を持つことができたので何とかなりました。道筋が立ってから残り40分くらいしかなく、時間が足りなかったので、論証やあてはめは本当にぐちゃぐちゃでした。

令和5年度 京大ロー入試 憲法

 今回は令和5年度京大ロー入試の憲法について書きたいと思います。

 

**********

①解答構成

②反省

**********

 

憲法 62点

 

①解答構成

第1問 85分 4枚ぎっしり

 

⑴Cに対する集会不許可処分の憲法上の問題

本件不許可処分はCの集会の自由を侵害したとして、憲法21条1項に反するといえるか。

保護領域に含まれるか。

「集会」の定義。あてはめ。

制約があるといえるか。

集会の自由は防御権であり、道路等の公的施設の使用を求める権利までは含まれていないため、制約はないように思える

もっとも、《規範》パブリック・フォーラム論

本件では道路は伝統的パブリック・フォーラムであり、原則として自由な集会が可能であり、Cの集会の自由は制約されているといえる。

では、違憲審査基準をどのように設定するか。

以下の人権の性質を考慮。

1.道路は原則自由な集会が認められるべき場所である(パブリック・フォーラム論)。

2.集会の自由は自己実現にとって重要で、民主的プロセスにとって不可欠であり、また裁判所の審査能力も十分に及ぶ(二重の基準論)。

3.本件の制約は、Cの集会の手段・方法に着目する内容中立規制のように見えるが、「申請された集会の場所は行政代執行の現場に近接しており、合法的に行われる行政代執行を実力で妨害するおそれがある」という不許可理由は、Cの集会の内容が行政代執行の目的物である看板に深く関わっているために懸念されるものである。そうすると、Cの集会の内容が本件のようでなければ、許可されていたと考えることができ、内容規制であるといえる。内容規制によって保護される利益はその内容や程度が曖昧であって、その分恣意的になりやすく、また時・場所・方法のいかんを問わず規制されるため、その分制約が大きい(内容規制・内容中立規制二分論)

よって、厳格な基準を用いる。

具体的には《規範》明白かつ現在の危険の基準

本件についてみると、Cは集会を平和的に行うつもりであったため、本件行政代執行を実力で妨害する明白な蓋然性があったとは言えない。また、交通妨害については警察官を配置するなどして対処可能であった。とすると、本件では明白かつ現在の危険があるとは言えず、道路交通法77条2項の許可要件をみたしていないとは言えない。

以上より、本件不許可処分はCの集会の自由を不当に制約するものとして違憲である。

 

 

⑵Dに対する処罰の憲法上の問題

本件処罰はDの表現の自由を侵害したとして、憲法21条1項に反するといえるか。

保護領域に含まれるか。

「表現」の定義。あてはめ。

制約があるといえるか。

処罰されれば、自由な表現活動ができなくなるので、制約あり。

では形式的な側面から、本件処罰の根拠となった道路交通法77条1項4号に基づくB県公安員会の定める道路交通法施行細則に明確性があるか。

《規範》明確性の原則

本件では、本件施行細則の「人が集まるような方法」という文言が抽象的であり、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に自己の行為がその適用を受けるか否かの判断を可能ならしめる基準が読み取れるとは言えない。

よって、Dの表現の自由が不当に制約されているので、違憲

また実質的な側面から、違憲審査基準をどのように設定するか

以下の人権の性質を考慮。

1.表現の自由自己実現にとって重要で、民主的プロセスにとって不可欠であり、また裁判所の審査能力も十分に及ぶ(二重の基準論)。

3.もっとも、本件の制約はDの演説の手段・方法に着目する内容中立規制であり、内容中立規制によって保護される利益は客観的に把握できるので、その分恣意的になりにくく、また特定の時・場所・方法における規制であるため、その分制約が小さい(内容規制・内容中立規制二分論)

《規範》厳格な合理性の審査

本件では、交通の安全保護という目的は重要。もっとも、処罰という手段については、Dに前科を残すという重大なものであり、いきなり処罰するのではなく注意や勧告などのより緩やかな方法でも目的を達成できたといえる。よって、目的と手段との間に実質的関連性があるとはいえない。

以上より、本件処罰はDの表現の自由を不当に制約するものであり、違憲である。

 

 

第2問 45分 3枚とちょっと

 

本件訴えが憲法76条1項のいう「司法権」の範囲内といえるか

実質的意味の司法権とは、具体的な争訟事件について、法を適用し、宣言することによってこれを解決する国家作用である。

「具体的な争訟事件」とは、「法律上の争訟」(裁判所法3条)と同意義である。

「法律上の争訟」とは、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関わる紛争であって、かつ、法律の適用によって終局的に解決しうべきものをいう。具体的には、①紛争の具体性があること②当事者の権利義務・法律関係に関する紛争であること③法的解決可能性があること④紛争解決の終局性があることが必要である。

また、裁判所法3条にいう「その他法律において特に定める権限」とは客観訴訟や非訟事件についての権限である。一方で同条のいう「日本国憲法に特別の定がある場合」とは議員資格の争訟(憲法55条)、裁判官の弾劾裁判(憲法64条、78条)のことを指す。

本件訴えに関連して、2020年判決は地方議会の出席停止についての訴訟が「法律上の争訟」にあたるとした。これは地方議会が直接選挙(憲法93条2項)であるから、議員の出席停止が一般市民の法秩序に関わるものだと評価されたという理解もあるが、選挙形式と一般市民の法秩序の関係は曖昧であるため、妥当ではない。むしろ、地方議会の自律性の憲法上の根拠が不明確であるため、その独立性を尊重する必要がないと評価されたと考えるのが妥当である。

一方、議院については自律権が憲法上保障されており(憲法58条、55条、50条)、議員の懲罰権については憲法上明文の規定がある(憲法58条2項)。そうすると、裁判所は議院の独立性を尊重するべきである。

以上より、裁判所が議員の懲罰について審査することは議院自律権を侵害することになるため違憲である。よって、本件訴えは「法律上の争訟」にあたらない。

 

 

②反省

 第1問は目的手段審査に強引にあてはめました。Cに対する処分が内容規制であることについては憲法演習ノートに同じような考え方が書いてあったので、それを思い出して使いました。書きたいことは全部書いたので、手ごたえはいい方だったと思います。

 第2問は日評ベーシックに書いていたことをそのまま思い出せたことは、個人的にはファインプレーでした。ただ、部分社会の法理にもう少し言及すれば点数は伸びたかなと思います。「法律上の争訟」の要件についても、ただ羅列しただけですので、一つ一つの要件と本件の関係も明示すべきだったと思います。